大人の習い事としても人気のチェロ。
バイオリンに比べて安定した音程が出しやすいことに加えて、深くあたたかな音色も人気の一つですね。
作品の中での役割も幅広く、アンサンブルやオーケストラの演奏に厚みを増すという役割のみならず、主役としてメロディを奏でることもできます。
この記事では、クラシック音楽の中で、チェロのための作品として書かれた名曲を15曲ご紹介します。
ぜひ、お気に入りの作品を見つけてくださいね。
チェロの有名な作品
バッハ:チェロ組曲
バッハのチェロ組曲は、無伴奏チェロのための6つの組曲で、バロック音楽の中でも特に重要な作品群です。
バッハがこれらの組曲を作曲したのは、1717~1723年頃のことで、彼がケーテンで宮廷楽長を務めていた時期でした。
バッハのチェロ組曲は、以下の6つの組曲から構成されています。それぞれの組曲は、前奏曲(プレリュード)と5つの舞曲(アレマンド、クーラント、サラバンド、メヌエット/ブレー/ガヴォット、ジーグ)から成ります。
- 第1番 ト長調 BWV 1007
有名な「プレリュード」で始まるこの組曲は、楽しいメロディーとわかりやすい構造が特徴で、多くのチェロ奏者にとって、最初に取り組む本格的なクラシック作品となることが多いです。
- 第2番 二短調 BWV 1008
暗く深い響きが特徴で、内省的な雰囲気を持つ組曲です。特に「サラバンド」が有名です。
- 第3番 ハ長調 BWV 1009
明るく力強い曲調で、特に「ブレー」が有名です。
- 第4番 変ホ長調 BWV 1010
複雑な分散和音が用いられており、豊かな表現力と高度な演奏技術が求められます。
- 第5番 ハ短調、BWV 1011
A弦を1音下げたGにチューニングして演奏することを前提として書かれています。重々しい雰囲気の組曲です。
- 第6番 ニ長調 BWV 1012
5弦チェロのために書かれたとされており、現在の4弦で演奏するには非常に難しい作品。「アルマンド」はバッハの無伴奏チェロ組曲の中で最も演奏時間が長いです。
サン=サーンス:動物の謝肉祭より『白鳥』
チェロとピアノで演奏する曲として有名な『白鳥』は、サンサーンスの「動物の謝肉祭」という全14曲からなる組曲の中の1曲です。
「動物の謝肉祭」はもともと、サンサーンスが友人たちを喜ばせるために、プライベート目的のために作曲した作品でした。
そのため、プライベートな場では何度も演奏されていましたが、サンサーンス自身が亡くなるまで出版は禁止されており、初めての公開演奏がされたのは、サンサーンスが亡くなった翌年のことでした。
『白鳥』はもともとチェロと2台のピアノで演奏するものとして作曲されていますが、『白鳥』のみが独立して演奏される場合は、チェロとピアノ1台で演奏されることが多いです。
→組曲「動物の謝肉祭」より白鳥 の楽譜はこちら(ぷりんと楽譜へとびます)
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番 イ長調 Op.69
交響曲第5番『運命』や第6番『田園』と同じ時期の1807-1808年にかけて作曲された作品です。
この作品以前のチェロ・ソナタでは(ベートーヴェンの作品に限らず)、ピアノが主導的でチェロが伴奏的なことが多かったですが、このソナタで初めてチェロとピアノが対等に扱われた、と言われています。
ベートーヴェンはこの曲を、チェロパートは当時最高峰のチェリストであったアントニーン・クラフトが、そしてピアノパートは自分が演奏することを想定して作曲した、というだけあって、非常に技巧的な演奏が求められる曲です。
ショパン:チェロ・ソナタ ト短調 Op.65
ショパンのチェロソナタは、彼がピアノ以外の楽器のために書いた数少ない室内楽作品の一つであり、ショパンにとって生前に発表・出版した最後の作品です。
恋人のジョルジュ・サンドとも別れ、健康状態も悪化していくショパンを支え続けてくれた友人のチェリスト、オーギュスト・フランショームと共演することを想定して作曲し、1848年にパリで初演を果たしています。そしてそれがショパンにとって、パリでの最後の演奏会となりました。
この曲が作曲された時期は、彼の健康が悪化し始めた頃であり、その影響が音楽にも表れているとされています。
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 Op.38
ブラームスは生涯において2つのチェロソナタを作曲しており、それぞれ異なる時期に書かれたことから、ブラームスの作風の変化や成長を感じ取ることができます。
第1番は1862-1865年にかけて、ブラームスが29-32歳の時に作曲されています。
ブラームスはこのソナタの第3楽章でバッハの「フーガの技法」に基づく対位法を取り入れており、チェロとピアノが複雑な対位法的な対話を繰り広げています。
第2番は、第1番から約21年後に作曲されていますが、後に作曲された方がより明るく、情熱的な作品となっています。
これは、第1番を作曲した時は、同時期にドイツレクイエムを作曲していたこと、そして恩師であるシューマンの死からまだ数年しかたっていなかったことが影響しているかもしれません。
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
「ドヴォコン」の愛称で親しまれており、数あるチェロ曲の中でも、とりわけ有名な作品です。
もともとチェコ出身のドボルザークは、依頼を受けて、ニューヨーク・ナショナル音楽院院長として51歳でアメリカへ渡りました。
しかし、体調を崩すほどのホームシックになり、およそ2年半で帰国しています。
このチェロ協奏曲は帰国の2か月前に完成されており、募る祖国への想いをしたためるように、第3楽章にはチェコの民族音楽風のリズムが盛り込まれています。
さらにこの曲には、ドボルザークがかつて想いを寄せていた女性ヨセフィーナへの想いも込められています。
この曲を作曲していた最中、ヨセフィーナが重病であるという知らせが入り、彼がかつて作曲しこの女性にプレゼントした歌曲「一人にして」を第2・3楽章へ引用しました。
しかしチェコへ帰国後に、ヨセフィーナが亡くなったという知らせを受け、第3楽章のコーダにこの歌曲の旋律を付け加えます。
フィナーレへ向かう前の非常に甘く美しいメロディは、彼女への想いと追悼の意が込められているのです。
シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 Op.129
シューマンは、この作品をデュッセルドルフでの新しい職務(デュッセルドルフの音楽監督)に就く直前の1850年10月に、わずか2週間という短い期間で作曲しました。
同じ年に作曲された有名な作品としては、交響曲第3番「ライン」があり、こちらも11月-12月にかけての短い期間で作曲されています。
この時期、彼の精神状態はあまり安定しておらず、後に精神病の発作に悩まされることになります。しかし、この協奏曲は、彼の内なる葛藤や感情を見事に音楽として昇華した作品として評価されています。
シューマンのチェロ協奏曲は、彼が生きている間に公式に演奏されることはありませんでした。初演はシューマンの死後、1860年にライプツィヒで行われました。
ハイドン:チェロ協奏曲第2番 二長調 Op.101
ハイドンのこの協奏曲は、エステルハージ家の宮廷楽団の首席チェリスト、アントニーン・クラフトのために作曲された、と長年考えられていました。
(ベートーヴェンのチェロソナタ第3番に出てきたチェリストと同じ人)
さらに、クラフトの息子が「自分の父親が本当の作曲者だ」と語ったということから、本当にハイドンの作品かどうかも疑わしいとされていました。
ところが、ハイドン自身の手稿譜が1954年に発見され、クラフトの息子の証言は捏造であったことが判明しています。
さらに近年の研究により、そもそもクラフトのためではなく、イギリスのチェリストのために作曲されたことがわかっています。
チェロ協奏曲第1番に比べて、落ち着いて歌うような旋律が特徴の作品となっています。
\ チェロ+ピアノで演奏できる楽譜もあり/
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 Op.33
チャイコフスキーは18世紀のロココ様式にインスピレーションを得て、この作品を作曲しました。
ロココとはバロックに続く時代の美術様式で、優美で繊細な特徴があります。この『ロココ風の主題による変奏曲』でも、優雅で軽快なメロディーが展開されます。
主題と7つの変奏曲で構成されたこの作品は非常に高度な技術が要求され、チャイコフスキー国際コンクールチェロ部門の課題曲にもなっています。
↓ 4~がロココです
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調
ブラームスが作曲した最後の管弦楽作品で、ブラームスの友人であるバイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムと、同じく友人であるチェリストのロベルト・ハウスマンために手がけた曲です。
当時ブラームスは長年の友人であったヨアヒムと不仲になっていましたが、この曲を作曲する際にヨアヒムの助言を求め、これをきっかけとして二人はまた話をするようになったそうです。
このことから、クララ・シューマンは「和解の曲」と呼んでいます。
1887年7月頃に作曲に着手し、8月には完成、同年9月にクララ・シューマンの邸宅で、ヨアヒム、ハウスマン、そしてブラームスのピアノ演奏によって試演が行われました。
さらに10月18日には、この2人の友人の独奏とブラームス指揮によるオーケストラで初演が行われています。
マイナーだけどおすすめなチェロの作品
ベートーヴェン:『見よ勇者は帰る』の主題による12の変奏曲 ト長調
タイトルだけ見ると「知らない曲」というイメージを抱く人が多いと思いますが、表彰式でおなじみの、誰もが知っているメロディの曲です。
もともとヘンデルが作曲した『見よ勇者は帰る』というオラトリオの主題(主だったメロディ)を、12のバラエティで変奏した作品です。
変奏曲形式は、作曲家がテーマの多様な側面を探求し、演奏技巧を発展させるもので、ベートーヴェンは既成の曲をもとにした変奏曲をいくつも作曲しています。
ベートーヴェンの初期の作品でありながら、その才能と技巧の高さが評価されており、特にピアノとチェロのデュオとして、演奏会のレパートリーとしても人気のある作品です。
\ ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集と変奏曲集が聴けるこちらのアルバムもおすすめ /
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ベートーヴェン:ヴィオラとチェロのための二重奏曲2つのオブリガート眼鏡付き 変ホ長調
ベートーヴェンがウィーンに来てから5年目である1796年から1797年にかけて作曲したと思われる作品です。
ベートーヴェン自筆譜の標題に「1つのオブリガート眼鏡付きのデュエット」と記されていた、ということから、彼の死後に誰かが付けた俗称ではなく、ベートーヴェン自身が付けたタイトルであることがわかります。
おそらく、眼鏡をかけていた友人のヴィオラ奏者とチェロ奏者のために作曲した、と思われます。
眼鏡をかけて楽譜をみた彼らの、笑った顔が目に浮かぶようですね。
おちゃめなベートーヴェンらしい作品です。
ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲
ロッシーニはオペラ作曲家として有名ですが、室内楽曲もいくつか手がけています。
この二重奏曲は、知り合いのチェリストとコントラバス奏者のために作曲されたもので、チェロとコントラバスという低音楽器だけで構成される、非常に珍しい作品です。
ロッシーニのオペラ作品と同様に、この二重奏曲もユーモアと軽快さが感じられますが、特にコントラバスには、高音域での演奏や速いパッセージの処理が求められ、高度な技術を必要とする曲になっています。
ラフマニノフ:チェロとピアノのための2つの小品 Op.2
ラフマニノフが19歳の時、1892年の作品です。
その同じ年にモスクワ音楽院を首席で卒業し、さらにこの「2つの小品 Op.2」のあとに、代表作の一つである「前奏曲『鐘』Op.3」も作曲しています。
「2つの小品」は
- 第1曲:前奏曲
- 第2曲:東洋の踊り
の2つからなっています。
特に第2曲の『東洋の踊り』は、エキゾチックなメロディと躍動感のあるリズムが楽しい曲です。
フォーレ:蝶々 Op.77
フォーレの作品の中でも特に軽快で華やかな性格を持つもので、蝶の優雅で軽やかな動きを音楽で表現しています。
テンポが速く、リズムが変化し、急速な音が蝶の羽ばたきや飛び回る姿が目に浮かぶような曲です。
まとめ
この記事では、定番の名曲からマイナーな曲まで、チェロの名曲を15曲ご紹介しました。
とはいえ、チェロの作品はまだまだたくさんあります。
ぜひ、探して聴いてみてくださいね。
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