きらきらとした音色のピアノと、様々な色彩を放つオーケストラで演奏されるピアノ協奏曲。
始まりはバッハからで、これまでに数えきれないほどたくさんのピアノ協奏曲が作曲されてきました。
この記事では、冒頭のフレーズくらいならだれでも知っていると言えるような、有名なピアノ協奏曲をご紹介します。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73『皇帝』
『皇帝』と称されるこの協奏曲は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中で最も壮大で力強い作品です。
英雄的な主題と華麗なピアノパッセージが特徴で、オーケストラとピアノが対等に競り合う構成が印象的です。特に第1楽章の堂々たる序奏と、第3楽章の躍動感溢れるフィナーレが聴きどころです。
ベートーヴェンはピアノ協奏曲を全部で5曲作曲していますが、最後に作曲されたのがこの『皇帝』。
それまでの4曲は、ベートーヴェン自身が弾くことを想定していたため、ピアノに関してはすべての音符を楽譜に起こさずに、即興で演奏する部分がありました。(音楽用語で“カデンツァ”といいます)
しかし、この第5番を作曲した頃には難聴がかなり進んでいたため、別のピアニストが演奏することが前提となっていました。耳が聞こえないと、オーケストラと合わせることが難しいのです。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中で、作曲者自らすべての音を楽譜に記した唯一の作品といえます。
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
ショパンコンクールの課題曲としておなじみのピアノ協奏曲。
ショパンのピアノ協奏曲は全2曲しかありませんが、ほとんどのピアニストがこの第1番を選びます。
音楽のために20歳でポーランドを離れてウィーンへ行くことを決めたショパン。
ピアノ協奏曲第1番はポーランドを旅立つ直前に作曲され、告別演奏会でショパン自ら初演を行いました。
政情不安の最中にあった愛する祖国を離れてまで音楽の道へ突き進む決意や、想いを伝えられないまま残していく初恋の女性への切ない想いなどが感じられる、壮大でロマンティックな曲となっています。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番ハ短調 Op.18.
このピアノ協奏曲が作曲される3年前。
ラフマニノフは失意のどん底にありました。
初演した交響曲第1番が大失敗に終わったのです。
演奏終了直後から会場が騒然となるほどの酷評を受け、新聞には「地獄に音楽学校があったら彼は優等生だろう」という“イヤミ”まで書かれてしまいます。
ラフマニノフがまだ24歳の時のことです。
ラフマニノフはとても落ち込んで、作曲する気力さえ失ってしまいましたが、挑戦したオペラの指揮が評判となったり、友人や精神科の先生にも支えられて、徐々に元気を取り戻していきます。
そのような中で作曲されたのがピアノ協奏曲 第2番 ハ短調。
初演は大成功を収め、以後、ラフマニノフの代表作としても広く知られています。
この曲の冒頭は、鐘が響き渡るような重厚な和音のピアノの音で始まるのですが、ピアニストによって弾き方が異なっています。
これは、手の大きさが小さめ~標準くらいだと、楽譜通りの和音を抑えられず、音をばらして弾いているからです。
手が非常に大きかったと言われる、ラフマニノフならではかもしれません。
\ラフマニノフ本人による演奏/
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23.
チャイコフスキーはこの曲を作曲して、まず友人のニコライ・ルビンシテイン(モスクワ音楽院の創設者)に聴かせました。
ところが、酷評を受け、根本的に書き直すよう言われてしまいます。
憤慨したチャイコフスキーは、友人の助言を無視してそのまま完成させ、ドイツ人名指揮者・ピアニストのハンス・フォン・ビューローへ献呈し、大絶賛を受けます。彼はボストンでこの曲を初演し、大成功を収めました。
最初に聴いてもらったニコライですが、後に考えを改めてこの曲を認め、モスクワでの初演で指揮を担当しています。
広大なロシアを思わせる壮大な序奏はあまりにも有名ですが、ダイナミックなピアノの音が担当しているのがメロディではなく伴奏である、というのが興味深いところ。技巧的で美しいカデンツァや、ウクライナ民謡を取り入れたメロディにも注目です。
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
ノルウェーの作曲家、グリーグが25歳の時に作曲し、生涯を通して唯一完成させたピアノ協奏曲です。
この作品をフランツ・リストに見せた際に、リストはこの曲を初見で弾き(!)、「これこそ真の北欧だ!」と絶賛したといわれています。
シューマンのピアノ協奏曲と似ていると言われ、実際にシューマンのピアノ協奏曲を聴いて影響を受けた、とのことです。
しかしグリーグの作品は、ピンと張り詰めた冷たい空気の中に雄大な自然が広がる北欧の景色をそのまま音に落とし込んだような、シューマンとはまた違った空気感を醸し出しています。
まとめ
ここで紹介したもの以外にも、名曲といわれるピアノ協奏曲はまだまだたくさんあります。
クラシックは敷居が高いと言われがちですが、Apple Musicからクラシック専用アプリが出て、初心者でも気軽に聴きやすくなりました。
ぜひ、いろいろ聴いてみてくださいね。